第五話 ゲーム
今回は趣向を変えて、大学時代の友人の話を。女の子は出てこない貴重な話です。
大学生活最後の年。
授業はゼミだけで、友人Wの部屋にたまるのが日課になっていました。
集まる仲間は4人。各々が実家やバイト先からくすねてきた食料を持ちより、怪しい料理を作っては悶絶するという暇で貧乏な学生ならではの毎日を満喫していました。
ある日、Wの冷蔵庫から変色して紫色になっている牛肉を発見しました。
「これ、もうあかんやろ」
「焼いたらどもないって。俺は今まで食あたりになった奴見たことないし、大丈夫や」
今考えたら、この根拠の無い「大丈夫や」が全てのはじまりだったのです。
結局紫色の牛肉はカリカリになるまで火を通され、4人の胃袋に収まりました。
翌日の朝になっても、誰も体の変調を訴えません。
「言うたやろ?どもないねんて。食中毒とかは、ちゃんと火通さへんからなるんやって」
ここに一つのゲームが確立されました。
どう見ても傷んでいる食べ物を焼いて食べるゲームです。勝敗も何も無い、ただの根性試しでした。
この終わりのないゲームは、どんどんエスカレートして行きます。
牛肉に始まり、豚肉、魚、卵・・・。
そして遂に禁断の「貝に」辿り着いたのです。
その日のゲームもいつもと同じように始まりました。ターゲットは塩水につけても閉じたままの貝。
口を閉じたままなので、中がどんな色かは解りません。とりあえず煮沸消毒。何度も水を足して、数十分煮ました。
「貝は怖いっていうぞ」
「炊いたらどもないって。俺は今まで食あたりになった奴見たことないし、大丈夫や」
こいつ、友人のKなんですが、バカです。
出来上がった貝は少し苦かったものの、醤油でいただきました。
惨劇は明け方から始まりました。Kが、Wが、Sが、狭い部屋でのた打ち回って苦しんでいます。
M谷も例外ではありません。信じられない痛みが腹部を襲います。底冷えの京都、しかも北区です。
窓なんか凍ってます。しかしこの4人は汗をだらだら流してシーツを握り締めているのでした。
夜が完全に明けました。しかし4人の夜明けは気配すらありません。悶絶するSが口を開きました。
「もうだめだよ、救急車呼ぼうよ・・・」
こいつは広島出身ですが、東京指向が強く、いつも関東の言葉で話してました。
M谷とKが同意のうめき声をもらしました。声が出ないんです。
「救急車って、むちゃくちゃ金とりよるらしいぞ」
Wは目を閉じたままです。
「も、もうちょっと我慢出来るよな?」
再び同意のうめき声。
4人に夜明けが来たのは「笑っていいとも」が終わってからのことでした。
ゲームは、貝を最後に封印されました。
追伸。WとSは国家公務員、Kは某銀行に就職しました。M谷はご存じの通りです。