第六話 あぁ、無情
実は、M谷は下戸です。殆どお酒が飲めません。若気の至りってやつで、夜の街に出没していた時期もありましたからお酒もグイグイいけると思われがちなんですが、ホントだめなんです。
飲みに行っても、もっぱら介抱係。そんないい人なM谷にも悲劇は訪れたんです・・・。
その日は友人三人と行きつけのカラオケスナックで飲んでました。結構ねばって他の二人はもうベロベロ。もちろんM谷はシラフです。そのうち一人が限界点を越えたようで、フラフラと店を出ていきました。この店は全フロアがスナックなどになっている、繁華街によくあるビルの4階。M谷は足下もおぼつかない友人を支えて、エレベーターに乗りました。半分白目を剥いている友人を励ましながら、何とかビルの入り口へ。友人はこらえきれずしゃがんでローゲー三昧。
M谷は背中をさすりながら、強烈な臭気と見たくもない友人の吐瀉物から目をそらし、そこで初めて、そばにもう一人、ロゲロゲやってるお兄さんに気付きました。
友人も気付いたのでしょう、一人しきりロゲロゲした後、
「あはは、こいつ吐いてやがる、きったねえなあ!」
と見知らぬお兄さんを指さして笑い出すじゃありませんか。
M谷はとりあえず友人を立たせて店に戻しました。そしてフと気になって、店の入り口に戻りました。
さっきのお兄ちゃんに一言詫びておこうと思ったんですよね。このピュアなハートがアダになるとは・・・。
お兄ちゃんはまだ店の入り口でしゃがんでました。かなりイッちゃってたんでしょう。
「すみません、さっきは連れがとんでもないこと言って・・。酔っぱらってるんで、勘弁してやってください。」
お兄ちゃんはぎょろっとこっちを向きました。
その時、一階の店から団体さんが。そしてお兄ちゃんがいきなり叫び出しました。
「こいつ、オレが吐いてんのん見て、笑いよったぞ!」
ご機嫌さんだった団体の足が止まりました。ちょっと待ってくれ、オレじゃない、オレはただ・・。
団体から一人恰幅のイイお兄さんがM谷に歩み寄ります。いきなり胸ぐらをつかまれるM谷!
「ええ根性しとるやないか!」
「い、いや、あのですね、そうじゃなくってですね・・」
ビルから狭い道路を挟んで流れる高瀬川。川とは名ばかりで、水深は10cmほどでしょうか。ただ道路から水面までは2mくらいあります。M谷はそのまま2m下に突き落とされました・・・。
京都名物、高瀬川のせせらぎに身を委ねるM谷。なんで、なんでオレがこんな目に・・・。
悲痛な叫びも川面に消えていきます。立ち上がろうと上を見た瞬間、M谷は叫びました!
「き、牙一族!?」
なんと団体さんが次々と飛び降りてくるじゃありませんか!その姿はまさに牙一族。
そして次に始まったのは終わりのないストンピング攻撃・・・。
お母さん、どうして気絶したい時に限って、気が遠くなったりしないんでしょうね。